NEWS / リレーエッセイ
2021.10.29
三寒四温 ~こころをつなぐリレーエッセイ~【10月号】
ケアマネジャーとして仕事をしながら、戸塚区のメイトとしても活動中の庄司志織さんのエッセイです。 庄司さんの温かいまなざしを感じます。
私の母も認知症でした。父の死後一人暮らしをしていた母は、体操・絵手紙・フラダンスと多趣味で友人も多く楽しく過ごしているのだと思っていました。そんな母がいつからかお金の支払いや約束を忘れるようになり「おかしいな」と思っていたある日、絵手紙教室のお友達から「あなたのお母さん、ちっとも約束を守ってくれなくて迷惑しているんですけど」と怒った声で私の元に連絡がありました。あんなに皆さんと楽しそうに過ごしていた母がこんな風に言われるなんて・・と私は悲しくなりました。でも、「たぶん認知症なんだろう」という思いを飲み込んで、なぜか「迷惑かけてすみません」と謝っていました。
私が母のそばにいて今日は何の日だと毎日教えてあげればよかったのか、友人の方も「今日は教室の日よ」と何気なく母を誘ってくれることはできなかったのか、そんな気持ちがずっと私の心にひっかかっています。その母も4月に亡くなりました。
介護関係の仕事をさせていただくようになって随分経ちました。その間、たくさんの認知症の方とお会いしてきました。いつも近所のお庭からかわいい季節の花を摘んできてしまうHさん、「今日はあんぱんを買うこと」と書いたメモを何枚も何枚もポケットに入れているMさん、それぞれの方がみんな自分の大切な日々を、記憶を、抱きしめるようにして暮らしていらっしゃるのだな、と感じる毎日です。