NEWS / リレーエッセイ
2022.11.29

三寒四温 ~こころをつなぐリレーエッセイ~【11月号】

三寒四温 ~こころをつなぐリレーエッセイ~【11月号】

今月のエッセイは「若年性認知症・本人ミーティング」(桜木町)でお会いした丸山文子さんにお願いしました。認知症のある方の外出をサポートするボランティアガイドについて多くの方に知っていただく機会になればと思います。

同行二人

私はふだん、何らかの障害により一人で外出するのが難しいかたに付き添って移動するガイドヘルパーの仕事をしています。
今回はガイドボランティアとして、若年性認知症の本人ミーティングに初めて参加するAさんに同行する機会を得ました。
若年性認知症本人ミーティングは、支援コーディネーターが声がけをして毎月一回開催されるもので、横浜市内在住の当事者の方たちが集まってざっくばらんにいろいろな話をする中で、想いを分かち合ったり、生活上のヒントを得たり、刺激を得たりするための場となっています。
今回、Aさんのご家族に代わって同行することになったものの、私自身ご本人にお会いするのは初めてでした。
「どんなかただろう?」「気兼ねなく話をしてくださるだろうか」「こちらが何か困らせることを言ってしまわないだろうか」…あれこれと案じながら待ち合わせ場所に行きましたが、Aさんからの
「こんにちは、〇〇です」
のひと言と笑顔で、心が軽くなりました。

いつもの仕事であれば、まずご本人が安全に負担少く間違いなく移動することを第一に考えるのですが、今回はご本人にとって初めての場ということもあり、目的地までの時間をリラックスして過ごしていただくことも大切だと考えていました。
電車での移動中は、コロナ下ということもありあまり声を大きくして盛り上がることは出来ませんが、まったく話さないでいるのも気づまりな時間です。たまたまお互いが関西出身だったので、知っている街の話題で口火を切ることができました。
「あの街は学生時代に何度も遊びに行きましたよ」
「あの川沿いの辺はランニングするのにええんですよ」
「あそこの神社は広くて静かで、大好きなんですよね」(←久しぶりにしゃべる関西弁が何か新鮮…)
趣味の話などもぽつぽつお聴きしているうちに到着し、ミーティングに無事参加することができました。

後からお聴きすると、Aさんは最初のうちとても緊張されていたとのこと。人から勧められての参加であり、慣れない人と行く慣れない場所で、初めてのメンバーといったいどんな話をするのかーー予想もつかない流れに入る経験。緊張されるのは当然です。そのような場に加わること自体ご本人にとっては勇気がいるし、かなり疲れることだったかもしれません。けれども最後まで落ち着いて参加されていました。
帰りの道中にポツリと、「いまの状態にまだ気持ちの整理がついてない」と漏らされたことが心に残りました。

ミーティングの中でAさんが、「自分のこれまでのことを思い出すことは、脳トレにもなるのだと気づきました」とおっしゃっていましたが、私にとってもそれはひとつの発見でした。
認知症とともに生きる中で、たとえ小さなことでもプラスの感情がそこに生まれれば、脳トレにもなり心のマッサージにもなる。
日々しんどいけれども、互いに支え合って何とかやっていこうと思いを新たにすることの意味。
この時間を通して、ともに歩くガイドという役割にたずさわる上での励みをもらうことができました。

※丸山文子さんのプロフィール
教育現場での勤務から転職し、医療・福祉関係機関での相談業務についたのち、昨年退職して現在は障害のある方のガイドヘルパーとして働いています。

総合保健医療センター近くのイチョウの木
総合保健医療センター近くのイチョウの木