三寒四温 ~こころをつなぐリレーエッセイ~【8月号】
今月のエッセイは、前回の弘瀨美加さんからバトンを受けた行政書士/ファイナンシャルプランナーの星野涼子さん。現在携わるカフェを通じたまちづくり活動への思いを、ご両親のエピソードとともにつづってくださいました。
ひとりぼっちにならない街に…
「お弁当からエビフライだけ盗られた!」
「小さい人が私の服を鏡で合わせて持って行った」
夜になると毎日のようにかかってくる電話に、押し潰されそうになった日々。脳梗塞を発症し、高次脳機能障害となった母は、一人住まいが難しくなり、サービス付き高齢者専用住宅に入居しました。さらに1年後にはアルツハイマー型認知症も判明。その数年は、関係の良くなかった母と一人娘として向き合う義務感と、逃げ出したい衝動とのせめぎ合いでした。
そして、私は圧倒的に「ひとりぼっち」でした。亡き父も10年以上前に認知症を患っていたものの、その頃はきちんと向き合えなかったため、母には一生懸命向き合おうとはしましたが、なかなか本人の声に上手に応えることができないまま、結局がんも患い認知症判明から半年ほどの闘病の末亡くなりました。
早くに両親を亡くし、また母と上手く向き合えず見送った後悔もあり、地域で何かお役に立てることがないか、と思っていた時に出会ったのが、「たまプラーザ・みまもりあいプロジェクト」でした。「ある人・ない人カフェ」でたくさんの方のお話を伺い、母と必死で向き合っていたあの時に、自分の辛さを話せる場所があったら、そして、散歩が好きだった(警察のお世話になることも)母にもフラッと遊びに行けて、その時の母をありのまま受けて入れてくださる場所があったら、との気持ちを強くしました。
だからこそ今、そしてこれから、認知症に向き合うご本人やそのご家族に、たくさんの方に「一人じゃないですよ!」と伝えられるような場所や時間を地域に作っていきたい、そう思っています。たくさんの人が繋がる街になりますように…。
※星野涼子さんのプロフィール
行政書士/ファイナンシャルプランナー。相続、遺言、成年後見、そのほか夫婦問題や家計相談などを扱っている。横浜在住20年超。地域に根ざし、皆様からお気軽に日常の「お困りごと」を相談していただけるような「頼れる街の法律家」を目指し奮闘中。
星野さんのお母様が描いた「静物」という作品。手元に1枚だけ残った絵だそうです。