NEWS / リレーエッセイ
2023.09.27

三寒四温 ~こころをつなぐリレーエッセイ~【2023年9月号】

三寒四温 ~こころをつなぐリレーエッセイ~【2023年9月号】

今月は港北区にお住まいのHさんより、認知症のご祖母様との思い出を語っていただきました。女友達のような仲睦まじい関係性が素敵ですね。

祖母との思い出

認知症にまつわる思い出といえば、母方の祖母の晩年の日々です。
とても明るく前向きで、私とはまるで同世代の女友達のように買い物に行ったり、食事に行ったりする仲でした。
私が小さいときから手を繋いで一緒に歩いてくれて、「いつかは逆にあなたに手を引いてもらうようになるわー」と祖母が言っていたことを昨日のことのように覚えています。
そしてその十数年後にはその言葉が現実に・・・

孫の年齢や、起こった出来事の時系列が混ぜこぜになり、私の名前すら出てこないときもありました。時に祖母自身の若い頃のよき思い出にとらわれて、突然涙して周りを振り回したりすることも。
過去の出来事を今起こっているかのように話すこともあり、私は戸惑い、訂正したりしていましたが、それはあまりよくなかったと後に反省。認知症の方との付き合い方を分かっていなかったと思います。
それでも明るく可愛らしかった祖母。
私の母は認知症になると、昔のことばかり鮮明に覚えていて、人間は幼子に戻っていくのだと話していましたが本当にその通りでした。

幸い徘徊や、ところ構わない排泄などはなく、最後にはあっけなく膵臓がんで逝ってしまった祖母。たくさんの楽しい思い出と強く明るく生きる姿を残してくれました。

残念ながら祖母の死後、数年経って産まれた我が子は見られなかったけれど、2人の子ども、5人の孫、2人のひ孫に見送られた祖母。
祖母の注いでくれた愛情を私も息子に注いでいきたいなと思っています。

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祖母と訪れた思い出の海