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2021.07.01

【訪問レポート】認知症対応型デイサービス「ひだまり」 神馬幸子さん

【訪問レポート】認知症対応型デイサービス「ひだまり」 神馬幸子さん

神奈川区六角橋、神奈川大学入口のバス停から住宅街へ入っていくと、日当たりのよい一軒家に「スペースひだまり」の看板が見えてきます。

代表の神馬幸子さん

「認知症対応型デイサービス」とはどんな場所ですか?

認知症対応型通所介護は、利用者のみなさんがそれぞれの役割を持って生活することで、認知症の進行を緩やかにし、生活機能を維持向上することで、認知症になっても可能な限りご自宅で、みなさんの能力に応じて自立した日常生活を営むことができるように、「地域密着型」サービスに位置付けられている介護サービスです。

どうやったらひだまりを利用できますか?

ここは認知症を持つ方を対象にしたデイサービスで、現在は要介護1から3のかたを中心にいらしています。認知症で有っても他者とコミュニティの中で楽しく過ごすことで生きる実感を得たい!自分の楽しい時間を持ちたい方が利用されています。介護保険のサービスのため、ご担当のケアマネジャーの方を通じてご利用の申し込みをお願いしていますが、先にひだまりにご相談いただいてから、ご利用頂くまでの流れのお手伝いもさせて頂いています。

利用者さんは、一日をどう過ごしていらっしゃいますか。

利用の曜日を契約で決めさせていただいており、殆どの方は、利用日の朝にご自宅までスタッフがお迎えにあがります。ひだまりに到着後は、お茶タイムでくつろいで頂き午前中いっぱい、手工芸や園芸(雑巾部、園芸部)の活動、体を動かす体操などで楽しんでいただきます。ご自身の趣向に沿ってのご参加ですので、ゆっくりお話してくつろいでいるだけの方もいます。全てはご利用者ファーストですが、せっかくのひだまりなので、参加したくなる活動を探してご案内できるように考えます。

昼食も簡単な調理や、盛り付け、配膳を「やりたい!」を優先して一緒に行っていただきます。

勿論、包丁も、火も使いますので、スタッフとご利用者の方の信頼関係が大切な活動になります。昼食後の下膳、食器洗いも、同様に実施します。

午後一番はお昼寝クラブ 紙芝居を読むことで聞き手が眠くなり「ウトウト」する休息の時間を持っています。ウトウト・・・なので、本当に少しの休息。勿論、紙芝居の読み手も利用者の方が行う事もあります。とても上手に皆さんを寝かせてくれますよ(笑)

その後は、曜日によりウクレレ演奏でのハワイアンタイム 皆で歌い踊ります。利用者の方でハワイアンを長年されていた方がウクレレを演奏したり、踊りを他の皆様に手ほどきしたり、素敵なコミュニケーションタイムになっています。その他、庭でのお茶タイムや近隣の神社や公園への散歩をしたり、商店街に買い物に行ったり、ボランティアの方と一緒にゲームを楽しんだりその時その時にそれぞれの方らしさを考えて過ごしています。

取材に伺った日の午前中は、「雑巾部」が活動しているようですね。

ご利用者の方に多い80代のお母さんたちが今まで生活してきた中で普通にできる事はなんだろうといつも考えているのですが、たまたま頂いたタオルで雑巾を縫ってみようと思いまして。そうしたら、いろんな縫い方をしても大丈夫ということに気づいたんです。雑巾は、四角い形に縫えていると、成功になりますよね。縫っている途中のものを縫い続けてリレーすることもできるし…。

また、雑巾のタオルを寄付してほしいとSNSで発信したら、本当に寄付してくれた方もいました。縫って、お返しするというコミュニケーションもできて、自然な認知症の啓蒙活動になっていると感じています。縫うことが得意な利用者さんたちが、「雑巾部」と楽しんでできるといいなと思い、「部」にしました(笑)

また、先日のハロウィンイベントでは、保育園のお子さんに、手作りの温かみを伝えるためにも、雑巾をプレゼントしました。保育園とひだまりをZOOMでつなぐ試みにも、初めて挑戦しました。子供たちは、「画面に映っているおばあちゃんが、プレゼントに来てくれた!」と大喜びだったんですよ。

ご家族とはどのような関わりがありますか。

ご利用する当事者の方だけでなく、ご家族(ケアラー)の方の支援もとても大切と考えます。ひだまりはご利用も「レスパイト」目的ではなくご自身の時間を過ごす居場所としてご利用いただいています。ご家族はご家族として別のケアが必要です。ケアラー支援として、必要に応じて、相談をお受けし必要な資源につなげるなどの活動を行っています。関わりやすくして頂くための工夫も課題ですね。現在、認知症カフェ、弊社スタッフが関わり続けて来たヤングケアラーヘルプネットひだまり開催は毎月実施、若年性認知症の親を持つ子世代の会「横浜まりまりの会」は3か月に1回実施しています。

利用者さんの連絡帳ノートを見せていただきました

ひだまりでは、利用者さんの様子を撮影し連絡帳ノートにその日の様子をまとめています。この連絡帳ノートで、利用者さんの様子をご家族に伝えたり、ご本人がひだまりに行くのを確認したり。文字だけではなく、表情や笑顔、イキイキとお出かけした様子をそのままお伝えできるのがいいなと思っています。アルバムづくりの時間をつくっていて、難しい方はサポートをしながら、利用者のかたに連絡帳に写真を貼っていただいています。先日亡くなった方のご家族に、「これは宝だ」と言ってくれて、とても嬉しかったですね。こんな表情するんだね、と多職種の方にも伝えられた時は、このように残していて本当によかったと思いました。

神馬さんがひだまりを立ち上げるまでのきっかけは

12年前ごろ、介護の仕事を始めたころから私は認知症の方と過ごしてきました。認知症は誰でもがなり得る事を知れば知るほど、当事者である本人も一緒に住んでいるご家族も、周りで支える人も誰かと共に考え、共に在る事という存在が必要だと感じ続けています。認知症であろうとそうでなくても、地域で暮らし続けると言う事は「誰か理解し合える人がいる」「何かの時に手を伸ばしたら助けてくれる人がいる」「何か知恵を貸してくれる人がいる」その、なにげない、さりげない併走する人があるからこそ安心できるのかと思っています。それは、いろんな活動を通じてできていくもの。自分で立ち上げて、そう言えば、あそこがあったねと言われるようなプラットホームが街の中に在る事が必要と考え続け、仲間と覚悟を決めました。

今は、自分から多職種や地域の人に声をかけて、集まってもらいやすい工夫をして、失敗してもいいからチャレンジできるのが、立ち上げて良かったなと本当に思うところです。これが正解ということはないし、やっていて悩むこともあります。形をつくるのではなくて、ひとりひとりの人のことなので、失敗してもくじけずに頑張れているかもしれません。(笑)

ひだまりの場所をどんな場所にしていきたいですか

とにかく、色んな人とつながり、色んな人に関わって貰い、色んな人の居場所で有りたいと思います。コロナウィルス感染拡大での自粛や経済の不安定で社会全体が変わって来てしまいました。人とのつながりが断たれた事のショックは大きすぎましたね。ITの発展でリモートでつながる事が出来る様にもなりましたが、実際の人のふれあいを求めている人がとても多い事にも気が付いています。なので、どうやったらひだまりを「居場所」としてもらえるか、様々な仕掛けをして、ゆるゆると集まって「ひだまりファン」を増やしたいです。それが、結果認知症であっても無くても誰かとつながり生きるを発展させると信じています。

ひだまりのスタッフはどんな人ですか

ここを一緒に立ち上げたメンバーは、この十何年の間、同じ思いを持ち、語り合い、共有してきた仲間です。最近は、徐々に「ひだまりを見に行ってみたい」という方がボランティアとして来てくれるようになりました。「自分がひだまりにいたいからくる」と思ってきてくれていてご自身にとっても居場所と感じてくださっています。そして、ひだまりの思いを共感してくださって参加してくださる方が増えています。一日数時間でも、一か月に1回でも、利用者さんと一緒に雑巾つくる、ごはん盛り付ける、楽しく一緒にやってくれる人がいたら、本当にありがたいです。そしてそのうえで来てよかった、といわれるのは本当にありがたいことです。認知症に関心のあるみなさんに来ていただいて、まずは一緒に認知症のかたと過ごしてみていただいて、みなさんのことを知っていただきたいと思います。

地域との関わりを大事に考えていらっしゃるようですが、どんな関わりがありますか

2020年はコロナで殆どのイベントが中止になりましたが、六角橋は土地柄とても神社を大事にしていて、日頃から神社に散歩に行くことが多いです。神社では節分では豆まき、夏の大祓いでは疫病退散を祈り、秋には銀杏拾いを一緒に行いました。お祭りで町内会長さんに会って、お祭りで会って盛り上がって話をして、また手ぬぐいをたくさんいただいて、あずま袋をつくって、みなさんに雑巾と一緒にプレゼントしたりしていました。

区の社会福祉協議会の赤い羽根共同募金の募金活動では東神奈川駅で利用者の方の地域活動として今年初めて参加しました。また六角橋地域のオレンジプロジェクトにも、去年は商店街の飾りつけにお手伝いにいくなど参加しています。思い出せばきりのないくらい、地域との交流があります。

Facebookやツイッター、note等、積極的に発信していますね。

一人でも多くの方にひだまりを知っていただく事は、認知症の啓蒙活動につながると考えています。認知症を持つ当事者の方へも、ご家族の方へも、相談援助をしている方、ケアをしている方にも、ここの活動がヒントになったらと考えています。うちのやり方はオープンにしていき、また、そのSNSでのつながりで、私達の活動が豊かになるヒントを沢山得られています。今の状況をリアルタイムに発信するためにも、SNSの1日1呟き以上は確実に意識していますね(笑) 利用したい方や、全国各地の同じ思いを持つ方ともつながるきっかけになっています。

最近では、やきいもカフェをはじめてみました。手伝いにくる、のではなくカフェだから誰でも行ける、というしつらいです。秋だからいいかな、なんてと思って始めてみました。笑 これも、当日のうちに発信しました。

 こんな時嬉しいという瞬間を教えてください。

「デイサービスが初めて」という方が多いため、ずっと家にいてご家族様だけで何とか対応をしてきた人が来るようになって「ここがあって良かった」「ここに居るとついつい笑っちゃうのよね!」「どんな事より来るのが楽しみ!」と言いあってくれて。利用している方同士が自然にコミュニティを作っている姿を見たり、家族が良く話をされるようになったと言ってくださったり、利用前より明るくなった様子が見られたりするときは本当に嬉しいです。

また、それを地域内の専門職の皆さんも見て・感じて下さり、共感して共有してくださる事も嬉しいです。そこから、本当に困った事が起きた時に、その専門職の方との連携もとりやすく、解消させるための動きも深くなります。ここがあってよかったと言われると、作ってよかったと本当に思います。

市民の方に伝えたいことはありますか

認知症を出来れば予防したいと思いや、家族が認知症であることをなかなか理解できないでいる方も多い現状があると思います。しかし現在、認知症にならない予防方法は有りません。そして治す薬もありません。

では、どうすれば良いかというと、認知症を正しく知り、自分だけで解決しようとせずに、情報を正しく得て暮らしに活かし、そして備えていく事こそ大切だと思っています。そして2020年の今、大切な誰かを、より大切に思う気持ちが一番大切だと実感しています。家族だけでなく、友達、会社の人、家族がいない人、いろんな関わりがあるなかで、手を伸ばせばいる人どうしが希薄にならないためにも、「大事な人、大切な人を大事にしていくこと」をみんなで大切にしていきたいですよね。

最後に、神馬さんのように場を立ち上げたい人に向けて伝えたいことはありますか

仲間をつくりたいので、是非に立ち上げて頂きたいです!!「いつかは自分で」と思っている人の、いつかは、いつなのか。とはいっても、自分も立ち上げるまでそうとう時間が掛かってしまいましたので、気持ちはわかります笑。やっぱりやってみたい事は、自分の手で開くしかなくて。それは、仲間がいてできることです。これは、地域に存在するひだまりとしての幸せでもあり、自分の幸せでもあります。是非、立ち上げて、そして皆でつながって行きましょう。ひだまりに、見に来て、実感しにいらしてください。

認知症対応型デイサービス「ひだまり」

住所:横浜市神奈川区六角橋2-30-2

電話:045-620-0406

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