NEWS / リレーエッセイ
2024.03.25
三寒四温 ~こころをつなぐリレーエッセイ~【2024年3月号】
若年性認知症当事者の方のエッセイ、第3弾です。
過去のエッセイは、私が若年性レビー小体型認知症と診断されるまで(2023年11月号)、出逢い(2024年2月号)をご覧ください。
道
トラックドライバーであった叔父に連れられて幼い私が嬉しそうに助手席に座っている。
両足をブラブラさせながらリズムをとって楽しそうに鼻唄を歌っている。
幼い私は分かれ道にさしかかるといつも「どっちに行くのかな?」と少し不安になる。
そして叔父に言うのだ。「こっちの道に行くの?あっちの道じゃなくてだいじょうぶ?」
ちょっとすまして叔父は「道はみんな繋がっているから大丈夫なんだよ」と胸を張る。
そして今、大人になった私は左右の幼い腕白たちと手を繋ぎ、霧のかかった道を歩いている。私の少し重い足取りは子どもたちの軽快なスキップと妙に明るい韻を踏んでいる。
どこの曲がり角で「認知症行き」へとハンドルをきったのか、私は知らない。
あの時、いや、この時、いくら考えても私には分からない。
でも「認知症行き」のこの道の先は、きっとあの懐かしい道へと確かに繋がっているはずだ。
突然思い出した小さな物語が、まるで月明りのように私たちの行き先をほのかに照らしている。