NEWS / リレーエッセイ
2024.02.27
三寒四温 ~こころをつなぐリレーエッセイ~【2024年2月号】
今月のエッセイは、若年性認知症当事者の方に、医師との出会いについて語っていただきました。前回のエッセイは私が若年性レビー小体型認知症と診断されるまでをご覧ください。
出逢い
治療する場を求めて転々としましたが、結局検査をしてくれた病院へ戻ることになりました。梅雨に入ったばかりの重苦しい空の下、とても緊張して行ったことを覚えています。
脳神経内科の待合室は冷たく感じられ、名前が呼ばれた時には「期待するな」と心の中で呟きながら、ドアをノックしました。診察室に入ると、そこには満面に笑顔を浮かべた医師が座っていました。
これまでの経過を全て話し、こちらで治療を希望している旨を伝えました。私が話している間、医師はパソコンに目をやらず、きちんと私の目を見て話を聞いてくれました。そして、こう言いました。
「正直なところ、僕にとっても、とてもレアなケースです。39歳の若年性レビー小体型認知症の方は初めてです。僕自身も何とか現状維持できるようにしたいと思っていますが、進行性の病気であり、個人差があることを考えるとあまり先のことを言えません。だからこそ、まずは若年性レビー小体型認知症という敵を知るということから始めていきましょう。敵を知らなければ、何も治療することができません。僕が担当しますから、一緒に頑張っていきましょう。」
医師の言葉は張り詰めた心を解きほぐすかのように響き、私の目には涙が溢れていました。ようやく私と、私の病気を受け容れてくれる医師に出逢うことができたのです。
「生きていいのだ」と暗闇の中から一筋の光が私を包み込みました。