NEWS / リレーエッセイ
2023.05.29
三寒四温 ~こころをつなぐリレーエッセイ~【2023年5月号】
今月のエッセイは、当事者でありコミュニティ活動実践サポーターとして活躍されている前田恒夫さんによる、「“当事者からの情報発信の意義”とは(後編)」です。(前編は2023年3月号三寒四温エッセイをご覧ください。)
当事者として当事者の背中を押す前田さんの温かなメッセージをお届けします。
“当事者からの情報発信の意義”とは(後編)
今回は、当事者自身の想いやできることの情報発信の意義(後編)について考えてみたいと思う。
先ず、当事者からの情報発信が少ない背景について考えてみたい。可能性として、以下の2点が考えられる:
㋑“認知症啓発をテーマとする三寒四温のエッセイ”のような“ネット配信のメディアや機会が知られていない”可能性
㋺当事者の“本音(気持ちや要望、自分にできること等)”を支援者側が“聴きだせていない”可能性
次に、その“背景にある課題”と“対応策”について、それぞれ考えてみたいと思う。
㋑“認知症啓発をテーマとする三寒四温のエッセイ”のような“ネット配信のメディアや機会が知られていない”可能性の場合:
【対応策】
- 何らかの理由/事情から、当事者自らの情報発信が困難な状況の可能性が考えられる。例えば、自ら執筆/投稿することが“苦手”な場合は、支援者側が事前にヒアリングし、当事者の代りに発信する案、もしくは、Zoom 活用によるオンラインの認知症カフェで、“同伴者”が“当事者”から、直接、聴きだして“代弁する”案など
- PC を使ってのネット配信が困難な当事者には、当事者在住地域でのローカルニュース(港北区例:“タウンニュース”、フリーペーパー“えがお”等)を通じての“取材に基づく活動事例紹介記事”として配信する案など
- 当事者在住地域の町内会/自治会や認知症カフェの“ゲストスピーカー”として、当事者自身が元気に活動している“具体的事例を参加者に直接語ってもらう”案など
㋺当事者の“本音(気持ちや要望、自分にできること等)”を支援者側が“聴きだせていない”可能性の場合:
まず、支援者に日頃の当事者との接し方についてふり返ってもらうと、もしかしたら、“怒ったり/否定したり”していないだろうか??
もし、そうだとすると以下のような“傾聴”に徹した接し方に変えてみることをお勧めしたい。特に、“認知症に関わる方々”にはぜひお勧めしたい:
【対応策】
- まず、“横浜市健康福祉局”が勧める、当事者への対応“3つの心得”として、以下の3点を基本とする接し方:
イ) 当事者と同じ目線で、正面から“えがお”で接し、“驚かせない”こと
ロ) 当事者のペースに合わせ、“急がせない”こと
ハ) “自尊心(プライド)を傷つけない”こと- “きく”には、以下の3つがある:
イ) “聞く”:聞き手にとって、興味・関心のあることを聞きとること
ロ) “訊く”:訊き手が“知りたいこと”を尋ねる/質問すること
ハ) “聴く”:相手(当事者)のことを“積極的に理解しよう”として、聴き手が“耳”と“目”と“心”を集中して“聴く”こと
以上の3つがあるが、できれば、㋩の“積極的傾聴”をぜひお勧めしたい!- “積極的傾聴を実践”するには、“当事者の想い/要望/できること”を聴きだすこと“をテーマとして、A)当事者、B)聴き手、C)観察者(オブザーバー)”の 3 つの役割を、順次交替し、実体験する“ロールプレイ”がお勧めである。具体的には、下記の図をそれぞれ参照し、イメージしてお試しいただければと思う。
以上、本稿が、一人でも多くの“当事者からの情報発信のキッカケ”となれば、“当事者と支援者間の相互理解”がより深まり、“認知症に対するマイナスイメージの払しょく”や住みやすい街横浜に発展する可能性が期待できそうな気がしている昨今である!