NEWS / 取材・レポート
2021.07.18

全国の認知症カフェを訪れて コスガ聡一さん

全国の認知症カフェを訪れて コスガ聡一さん

全国の認知症カフェに訪れ、認知症カフェの現場を伝えるコスガさんにお話しを伺いました。

「認知症カフェ」はどんな場所ですか?

認知症カフェは、認知症の人と家族、地域住民、専門職等の誰もが参加でき、集う場と定義されています。私なりに表現すると、あらゆる人が「認知症」と出会いなおす場所だと思っています。自分自身が介護・医療系の仕事をしているなど認知症の人と普段から接していない限り、認知症は「どうにもならない」「なったらおしまい」という古いイメージを持ってしまいがちですよね。でも、そのイメージが家族や本人を苦しめてきました。認知症カフェに参加してもらえれば、そのイメージや価値観が少し変わるかもしれません。

コスガさんが認知症カフェを取材しはじめたきっかけを教えてください。

「認知症カフェは誰でも行ける場所」と聞いていましたが、2016年当時はインターネットで調べてもすぐに見つかりませんでした。そこでだれもが簡単に認知症カフェについて情報を得られるよう、全国の認知症カフェ一覧表を作り、ネットで公開しはじめました。取材をすすめるにつれて、認知症カフェは多種多様で決まったカタチがないことを純粋に不思議だなと思い、惹かれていきました。

全国の認知症カフェを取材していらっしゃいますが、認知症カフェのどんなところに心惹かれるのでしょうか

これだけ多様な活動がほぼほぼボランティアで立ち上がっていること自体、とても奇跡的なことだと思います。さらに、どこのカフェでも使命感の持った素晴らしい人たちと出会うことができます。それは毎回とても刺激的なことです。

特に心惹かれるのは、「何かのチャレンジをしている」カフェでしょうか。主催者の人ならではの使命感が場に現れていて、家族であったり、町内であったり、主催者の方の思いがうまく表現できて、やりたいこと、できることが伝わってくる認知症カフェに出会えると心動かされます。

コスガさんは、どうして認知症カフェが必要だと考えていますか

医療保険や介護保険は本当に良くできた制度ですが、よくできた制度ほど隙間が生じやすいのは宿命なのかもしれません。そんな制度の隙間をカバーできるのは、認知症カフェを含む多様なインフォーマル活動だと私は考えています。

今回出版された本(認知症カフェガイドブック)では認知症カフェの分類を紹介されています。どのように分類を試みたのでしょうか。

これは、本当に手探りでした。取材を始めた当初から、どのように認知症カフェをカテゴリーできるか考えたいと、これは自分のテーマだと感じていました。制度の一部でないからこそ、この活動に秩序や理由を見つけられたら、認知症カフェの良さをもっと伝えられるのではないかと思いました。

 当事者家族がはじめた「家族会型」と認知症になっても暮らしやすいまちづくりを目指した「地域型」など、同じ認知症カフェと言っても、理想や目標は異なります。分類するっことで別の目標をもったグループであること、活動であることを認識できるのではないかと思うのです。出版にあたり、運営主体のほかに、目標の違いには、「対人支援観の違い」があるのではないかと分析しました。1つは、居場所型(参加者の事情に寄り添って場所のルールが変化する)もう1つは、避難場所型(参加者はいずれ次の場所に移ることを前提とし、場所のルールは変化しない)です。運営している主催者にとっては、自分たちの認知症カフェの特徴を客観的に知ることができれば、今後の目標や改善策などを仲間と共有しやすくなるでしょう。

認知症カフェがこれからどのように展開・続いていったらいいと思いますか

短期的には現在の感染症対策とどう両立していくか。検温、消毒、換気などできることをしつつ小規模でも再開・継続していけたらいいですよね。また、オンラインと実際の参加を併用したハイブリッド形式の認知症カフェの取り組みも始まっています。この機会にオンラインに慣れておくと今後のためにもなるのではないかと思います。中長期的には、認知症というテーマを入口に「生老病死」など哲学的なことを語り合う文化が私たちの社会に根付けば素晴らしいですね。

市民のかたに伝えたいことはありますか

認知症カフェに参加することで、認知症に関する世界観が変わり、年を取ることのこわさや、家族に迷惑をかけたくないという心配から、少しだけ自由になれるのかなと。ぜひ認知症カフェに参加して、価値観が少し変わることを楽しんでほしいです。私自身、認知症に対する見かたが変わり、もっと豊かに人生を過ごせると強く確信するようになりました。また、当事者の方の発信を聞いたり、書籍を読んで、最新の情報に触れ、認知症のイメージを新しいものにしていっていただきたいです。

認知症カフェを立ち上げたい・運営している人にひとこと

これからカフェを立ち上げたい方にお伝えしたいことは、「外に知恵を求める」こと。認知症カフェにはすでに多くの実践例があり、長年取り組んでいる仲間が全国各地にいます。いろんなカフェのタイプがあるので、これから立ち上げようとする人や既に運営している人にとって有益な情報も蓄積されてきました。他のカフェではどうしているのか、どこかにいいアイデアがあるのではないか、解決策を外の人に知恵を求めて、聞いてみるといいと思います。

長く続いているカフェに共通点があるとすれば、まず第一にスタッフが楽しんでいるということです。ぜひ、専門職の方には、自分の役割を少し外して参加していただきたいなと思っています。

「認知症のひとがいない・来ない」と悩んでいる認知症カフェもあると思いますが、いまのメンバーの中からやがて認知症の方が現れる(確率としては6人にひとり)と考えて、そのうえでたとえ認知症になっても変わらずに参加し続けられるようにするにはどうしたらいいかということを大事にしていただきたいですね。

長年の友人から「認知症と診断された」と打ち明けられたれたときに、どうしたら変わらずにつきあっていけるかということを今のうちから考えられるようになるのも認知症カフェの役割ですね。

認知症カフェに参加したいと思っている人にひとこと

今までお話しした通り、本当に様々な認知症カフェがあります。そのなかから自分に合った場所と出会うためには、初めに3ヶ所選んで行くといいと考えています。おすすめは「近く・ちょっと遠く・遠く」のカフェです。横浜市にお住まいのかただったら、お住まいの近くのカフェ、横浜市内のカフェ、横浜市の外のカフェ、などです。認知症について知りたくて参加したとお伝えすれば、どこの認知症カフェで歓迎されると思いますよ。

最後になりましたが、「取材」(メディア)を通じて、コスガさんは認知症カフェにとってどんな役割をはたしていきたいですか

認知症カフェの本質は「草の根」だと考えています。小さな活動こそが大事です。だからこそ小さな活動をエンカレッジ(励まして)していきたい、勇気づけていきたいですね。そうして認知症カフェのすそ野を広げることこそが私の役割だと思っています。

プロフィール

コスガ聡一さん

1977年生まれ、横浜市在住。フリーカメラマン、ジャーナリスト。

ウェブメディア『なかまぁる』(朝日新聞社)にて「コッシーのカフェ散歩」連載中

平成30年度老人保健健康増進等事業「認知症カフェを活用した高齢者の社会参加促進に関する調査研究事業」研究委員会委員及びワーキンググループ委員

メール:

ツイッター:https://twitter.com/ninchishocafe_g

全国認知症カフェガイドon the WEB

http://ninchishocafe.jugem.jp/

なかまぁる

https://nakamaaru.asahi.com/